2015年6月25日木曜日

跋に代えて。

ふぉりくろーる。を閉じてから
早いものでもうすぐひと月です


いくつかの宿題と向き合いながら
愉しかった思いを振りかえりつつ
これからのことを考えています


いささか唐突ですが
夢のこと


「いつかこの地にほんとうの東北を実在させたい」


大人も子供も年寄りも
けものも虫も鳥たちも
木や草花
星や海や空も集って
立場をこえて
みなが通いあえる場所


世界中の家族や友人や恋人たちが憩い
音楽家は奏で
詩人は謡い
職人が腕を振るい
皆が未来について語らう
そんな豊かで実りある日常


途方も無いことわかっています
そんな夢物語
あるいはただのユートピア


それでも懸けてみたい
一年前
この街で店を構えるときに予感した
ロシアのフォークロアとの東北的なつながり
たった一年間だけど
国を超えて
時代を超えて
見えた気がした
東北的フォークロアの通底


焼石連峰のむこうにあったはずの大国ソ連
体制は消えても
大地は消えない
時間の堆積は
北からここへとたどり着いた
初めての人類の面影をいざないます


数百万年の時をかけた大地の隆起
北上山地と奥羽山脈のあいだ
北上川を成したかつての入江にたち
彼らの面影について
クジラの先祖と対話する


「古いものと新しいものが対峙する
 入江とはそういう場所だよ」


クジラの化石の声を聞き
東北のプーシキンは
物語の詩を綴る
 

語りとは
ひとつの詩であり絵であり音楽であり
人間の営みとして
食べることや眠ること
愛しあうこととおなじように
この地上に無数に存在しているはずで
誰かが語ることが
また誰かの語りとなり
それぞれに存在する世界や宇宙が
それぞれを照射しあうコスモスを浮べる


無数に無限に存在する可能性のなかで
理想と現実のはざまで
経済のことや環境のこと
子供達のこと
隣人たちのこと
旅人たちのこと
生きてゆくことを
信じたり
誓ったりする


かつての自分たちに向けていま思うこと
おなじように
いまの自分たちに向けて未来から思うこと
かさねてゆきたい


ソビエトという時代が生んだ数々の絵本と
この時代のこの国で交わしあえた方々と
共に過ごした大いなる時間のなかで
だんだんようやくわかってきたこと


ふぉりくろーる。は
そんな東北へ至る道程で差し掛かった
小さいけれど深く美しい森でした



2015年6月25日
ふぉりくろーる。拝